岸田文雄議員の夫婦写真に対する「違和感」に対する「違和感」

記事更新日: 2023/08/16

ライター: 川口 美樹

この記事を書いた人

川口 美樹LoveBook編集長/婚活の鬼コーチ

恋愛・結婚・パートナーシップの専門家として書籍の出版やTVに出演

マッチングアプリや結婚相談所業界の裏側にも精通Twitterのフォロワーは1.5万人。(プロフィールページ

岸田議員の夫婦写真に端を発した記事が炎上しています。

この記事の筆者によれば、

まるで1975年に炎上したCM『私作る人、ボク食べる人』を地でいくような写真

に見えるそうです。

このCMは、いわゆる昨今よく話題になる「広告炎上」のハシリのような事例で、広告とジェンダーを考えるときにはよく出てくるCMです。

Wikipediaには以下のように記されています。

CM内の台詞が性別役割分担の固定化につながるとして婦人団体から抗議を受け、約2か月で放送中止となった。日本においてジェンダーの観点から広告が社会的に問題視された最初の事例として知られている。

しかし、実際にこの動画を見ても

川口

どこをどう見たら、そう見えるんだろう?

という感想にしかなりませんでした。

僕がこの記事の言及について感じた「違和感」をできるだけ言語化したくて筆を取ります。

なお、本記事では「岸田議員が政治家としてどうあるべきか?」については一切論じません。

本記事のライターの中村さんは

このように弁解されて、奥さんが立つのではなく、座っていたならかなり違った、と述べられていますが、「そういうことじゃない」のです。

ジェンダーギャップは本当に是正した方がいいのか?

ちょっと変なところから議論を始めます。

僕は、「日本のジェンダー意識は諸外国に比べ低すぎる」事実については、確かに危機感を持っています。

しかし、ジェンダー格差が埋まれば幸福になるのか?には疑問があります。

ジェンダーギャップ指数が低いのは事実

ジェンダーギャップ指数は「経済・政治・教育・健康」の4分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。

2020年の日本の総合スコアは0.652で、順位は153か国中、121位(前回は149か国中110位)でした。

特に政治分野における「不平等さ」に関しては、ご覧の通り誰もが納得の数字が出ています。

経済格差もめちゃくちゃ順位が低いですね。

これが「ガラスの天井」とか「男性が下駄を履いている」とか言われている問題ですね。

男性の幸福度が極端に低い日本

では、実際その「優遇されている男性たち」は、どう感じているのでしょうか?

最新の世界価値観調査(2017-2020)によると、日本は先進国一「男性が女性よりも幸福でない国」であることがわかります。

川口

経済的にも優遇されている男性の幸福度が、なぜこんなにも低いのでしょうか?

それは、「男性に求められていることが多すぎるから」だと言われています。

「稼いで、家事も育児もやって、女のキャリアも理解しろ」と言われる男性

以下は、平成27(2015)年に実施された「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」のデータです。

結婚相手に求める条件として、容姿を除く全ての項目において、女性が男性に対して重視している割合が多くなっているのがわかるかと思います。

女性が男性に経済力を求めるのも、男性が女性に経済力を求めないのも、「男が稼いでなんぼ」の価値観がいまだに根強く残っているからでしょう。

そして意外にも、相手に「家事・育児の能力」と「仕事への理解」を重視しているのは男性よりも女性の方が多いのです。

男は、昔から「稼げ」と言われ続け、その結果「夫が稼ぎ、妻が支える」構造を作られてきました。

そして今、その「稼げ」のメッセージを減ることはなく、「家も子どもも見ろ、妻のキャリアも理解しろ」が乗っかったのです。

川口

日本の男性は「下駄」をはかされた結果、不幸を感じやすくなってしまったようです。

※「結婚が全てじゃない」という意見もあると思いますが、既婚男性と未婚男性でも幸福度にかなり開きがあるのが日本なのです。

ジェンダー格差が埋まると女性は幸福になるのか?という疑問

さて、ジェンダーギャップが是正されて、女性が政治の世界でもビジネスの世界でも活躍するようになったらどうなるのでしょう?

いま、日本の男性が女性に期待されていることが、男性も女性に対して期待するようになったら、それは女性にとって喜ばしいことなのでしょうか?

めちゃくちゃ頑張ってキャリアを伸ばしに行った結果、日本男性のように不幸にならないか?

それが『日本のジェンダーギャップ指数の順位が低いすぎる』ことだけを根拠に、是正を求めることへの違和感です。

「古い価値観」も多様性の一つである

話を戻しましょう。

筆者は、「ジェンダーギャップ指数が低い国の政治家が、その象徴となるような、”妻が作って夫が食べる”ことを強調した写真を載せるのはいかがなものか」と述べています。

「まるでお手伝いさんかお店の人みたい」「すごく昭和感」「時代錯誤」などの反応も寄せられている

と書かれていることからも、この写真が「昭和的で時代錯誤な」日本のジェンダー観そのものだ指摘しているわけです。

しかし、その「昭和的で時代錯誤な」時代観が、女性を男性よりも幸福にし、男性を女性よりも不幸にしてきたのです。

川口

この「昭和的で時代錯誤な」写真は本当に批判すべき対象なのでしょうか?

ここに僕は一番の違和感を抱きました。

「昭和的で時代錯誤な」夫婦でも幸せである

とはいえ、僕も「男が稼いで女が支える」のは時代錯誤な価値観だなと考えています。

夫の稼ぎだけ家族を養える時代じゃないですし、夫婦共働きにならないとやってられないというのも、算盤を弾けばすぐにわかる話です。

男性は専業者願望のある女性を希望しない傾向にある、ということも統計を見れば一目瞭然です。

しかし、それはマクロの話。

ミクロの世界では、夫「夫が稼ぎ、妻が支える」家庭があっても何の問題もないと考えます。それが政治家であっても、です。

しかもこのツイートは、「地元から上京してきてくれた奥さんが食事を作ってくれた」といっているだけで、「毎日妻が食事を作ってくれていて、僕は育児・家事をしていません」とは一言も言っていません。

しかも普段は、

これが事実なのであれば、記者としてこのことに触れないのは、あまりにも取材不足であると言わざるを得ません。

多様性とは、古い価値観を含めての多様性

日本の古い価値観を否定する先進的な人たちは、多様性を認めることの重要性を訴えています。

その方が、新しい価値観を受け入れてもらいやすいからでしょう。

しかしその「多様性を認めよう」と発信している人に限って、これまでの古い価値観に対して否定的なのはなぜなのでしょうか?

筆者の方は、「否定していない」「色々な夫婦の形があって良い」と主張していますが、

まるで1975年に炎上したCM『私作る人、ボク食べる人』を地でいくような写真

と書いておいて

川口

さすがにそれは無理があるだろう

と思います。

ジェンダーギャップを埋めるために、多様な選択肢を認める社会にしていきたいのであれば、そのジェンダー格差を作った価値観も認めなくてはなりません。

このツイートの方も、女性=補佐役という価値観が悪だと信じて疑わないからこそのツイートなのでしょう。

女性が補佐役だとどうしていけないのですか?

終わりに

では、メディアとして、この写真からジェンダーギャップについて扱うにはどうしたら良かったのでしょうか?

筆者が、仮に「男が座って、女が立っている構造」にジェンダーギャップの問題を感じる、という主張をあくまで通すなら、「妻を同じ目線に座らせない政治家」の何が問題なのか?をもっと具体的にデータを交えて、主張する必要があります。

でなければ、

  • 「昭和的で時代錯誤な」形で幸せを築いてきた親たち
  • 「そういう幸せの形」があることをみて育った子どもたち

を納得させることはできません。

今回の記事ではその客観的な根拠がないまま、主観のみで書かれていたために、批判が相次いだのでしょう。

誰が次の首相になるのかは分かりませんが、僕は日本の首相には(男性なら)

「女性がバリバリ働いて、夫が家を支える家庭があってもいい。もちろんその逆であってもいい。それぞれの夫婦が納得のいく形を作れる社会を目指します。ちなみに我が家は、妻にしっかり支えてもらっているので、すごく感謝しています」

と言える人であって欲しいとは思います。

【LoveBookの人気記事】

\結婚したい人必見!/
婚活完全ガイド

外部リンクアイコン 詳細をみる>>>

\彼氏・彼女が作りたい人/
恋人作り4ステップ

外部リンクアイコン 詳細をみる>>>

男女関係にまつわる悩み

外部リンクアイコン 詳細をみる>>>

オトナの恋愛事情

外部リンクアイコン 詳細をみる>>>

 

この記事に関連するラベル

結婚式場サイト一覧

ページトップへ